東京オリンピックの延期やコロナウィルス禍など、今、日本だけでなく、世界全体の経済の先行きが不透明感を増しています。
そんな時、会社経営の舵取りは、難しさを増し、キャッシュフローは厳しさを増しています。
最近、よく目にするようになったのがファクタリングです。ファクタリングは、そんな情勢の中、会社にとって救世主なのでしょうか?
ファクタリングを利用するにあたって、最低これだけは知っておきたいという基本情報をまとめました。利用の際の参考にぜひなさってください。
ファクタリングの仕組み
ファクタリングとは、“一般に、企業が取引先に対し有する売掛債権をファクタリング会社が買い取り、買い取った債権の管理・回収を自ら行う金融業務のことを言います。法的には、売買契約に基づく指名債権の譲渡であり、金銭の貸し借りではありません。”
いきなり、難しい用語がいっぱい出てきましたが、簡単に言うと、企業から売掛債権=入金待ちの請求書を買い取り、売掛債権の管理や回収をする金融サービスのことです。
日本では、1970年代初めに登場した比較的新しい方法です。それまでの日本では、中小企業を中心に明治以来、手形取引、特に裏書譲渡という商慣習が続いてきましたが、時代の変化とともに、大きく変化してきました。
ファクタリングでは、入金待ちの売掛債権を買い取ってもらい、迅速な現金化が可能になります。
資金余力がなく、キャッシュフローに行き詰っている会社、特に中小企業には、魅力的で有効なサービスと言えるでしょう。
参考:https://www.fsa.go.jp/receipt/soudansitu/advice04.html
ファクタリングの種類
ファクタリングには、取引先の関わり方の違いによって、「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類があります。
その違いと特徴をご説明します。
どちらを選ぶかは、手数料や取引先との関係性などを考慮するといいでしょう。
(1)2社間ファクタリング
2社間ファクタリングとは、文字通り、2つの会社間で行うファクタリングのことです。
2社とは、あなたの会社とファクタリング会社のことです。
2社ファクタリングのメリットは、2社間だけの手続きになるので、債権の現金化が迅速に行われます。そして、ファクタリングをしていることが、相手先の会社に知られないので、「資金繰りが苦しいのか?」という疑念を抱かせる心配がありません。
ただ、知られた時の信用失墜のリスクもあります。
さらに、2社間ファクタリングは、中小のファクタリング会社が行っているので審査基準が比較的緩く、利用しやすいと言えます。
ただ、その裏返しとして、2社間ファクタリングを扱っている大手業者はないということです。つまり、中小のファクタリング会社の中には、悪徳業者が紛れている恐れもあり、要注意です。
また、手数料が、3社間ファクタリングに比べると高くなっていることも考慮に入れておく必要があります。
(2)3社間ファクタリング
3社間ファクタリングは、3つの会社間で行うファクタリングのことです。
3社とは、あなたの会社、ファクタリング会社に、取引先の会社が加わります。
3社間ファクタリングの場合、取引先の承認が必要です。たしかに、取引先にファクタリングを利用することを明らかにしなければなりませんが、取引先との取引に透明性が担保できます。
しかし、取引先の承認が必要なため、現金化がスムーズにできず、時間がかかってしまいます。
また、大手ファクタリング会社のため、審査が中小のファクタリング会社に比べると厳しくなります。その分、手数料を低く抑えることができます。
会社によっては、金利が手形割引程度のところもあります。
3社間ファクタリングの場合、取引先が直接、売掛金をファクタリング会社に支払うため、あなたの会社が売掛金を回収する必要はありません。
3社間ファクタリングは、大手ファクタリング会社が扱っていますので、悪徳業者が紛れ込むリスクは少なくなります。2社間ファクタリングに比べると、手数料は低めです。
他の資金調達方法との違い
ここでは、銀行融資や手形割引などの他の資金調達方法との違いをご説明します。
(1)銀行融資
企業が、事業拡大や運転資金を得るために、銀行からお金を借り入れるのが、銀行融資です。
一般的には、不動産などを担保にして、銀行から融資を受けます。ただ、担保に入れる不動産等がない中小企業では、融資を受けることができません。
担保となる不動産を持っている場合でも、審査は厳しく、時間がかかります。急な資金調達が必要な場合には、間に合わないこともあります。
一方、担保になる不動産等がない場合、売掛金を担保として、銀行から融資を受けるABLという方法もあります。
この場合、企業が返済トラブルを起こした場合、売掛金から直接回収し、返済に充てます。
いずれの場合も、借り入れであり、銀行融資の場合は、費用の名目は利息となり、「利息制限法」の規制を受け、借入時の金利に上限があります。
(2)手形割引
手形とは、一定の資格や権利を証明する書面のことで、有名なものでは、江戸時代に関所を越えるときに必要だった通行手形などがあります。
ここで言う手形とは、ビジネスの社会で使われる、代金の支払いを約束する証明書のことで、約束手形と為替手形があります。
日本で発行される手形のほとんどが、約束手形で、2~3か月後の決済を約束するために発行されています。
日本では明治時代以来、中小企業の支払い手段として、手形取引が続いてきました。
最近では、大企業を中心とした現金決済の拡大や、手形取引には印紙税がかかるため、コスト削減のために手形取引は激減しています。
なにより、発行した会社が債務不履行=不渡りになるリスクがあります。担保なしで2~3か月支払いを待つので、その間に発行した会社が倒産する可能性があるからです。
さらに、詐欺などのリスクも考えられます。つまり、大量の商品を購入し、手形で決済し、支払い日までに会社を倒産させて、商品をだまし取る方法です。
便利に使われてきた手形割引ですが、いろいろな状況の変化で、往時の1/10ぐらいの交換高になってきています。
ファクタリングのメリット・デメリット
従来の資金調達の方法に代わり、注目を集めているのが、ファクタリングです。
ファクタリングには、いろいろなメリットがあります。
しかし、一方で、確認しておきたいデメリットがあることも事実です。両方をしっかり確認したうえでの利用をおすすめします。
(1)メリット
ファクタリングには、いろいろなメリットがありますので、ご紹介しましょう。
銀行融資などの場合、取引実績などが必要とされることが多いですが、ファクタリングの場合は新規事業者でも利用が可能なことが多いです。
ファクタリングでは利用する会社の信用度も大切ですが、それ以上に売掛債権の信用度が重視されます。たとえ、起業直後の会社であっても、売掛先の企業がしっかりしているなら利用できます。不動産などの担保も必要ありません。
銀行融資ではないので、ファクタリングは借金ではありません。さらに、審査がスピーディで資金調達が迅速にできます。
2社間ファクタリングでは、ファクタリング利用について取引先に知られない点もメリットと言えるでしょう。
(2)デメリット
ファクタリングでは、手数料が、他の金融商品に比べて割高です。
融資の場合、利息は利息制限法の規制を受け、利息制限法以上の利息が付くことはありません。
しかし、ファクタリングは借金ではなく、売掛債権の譲渡になるため、手数料の扱いです。そのため、利息制限法が適用されないため、かなり高い手数料になることは、覚悟しておきましょう。
2社間ファクタリングでは、取引先にファクタリングを利用することを知らせる必要はありません。
ただし、「債権譲渡登記」を行う場合、取引先がそれを確認すれば利用が知られてしまいます。知られた場合のリスクは、考慮しておく方がいいでしょう。
2社間ファクタリングを扱っている大手のファクタリング会社はありません。
そのため、中小のファクタリング会社を利用することになります。健全で良心的な会社のなかに、悪徳業者が紛れていることもありますから、ファクタリング会社選びは慎重に行いましょう。
ファクタリングを利用するときの注意点
ファクタリングを利用する場合、銀行で融資を受けられない方でも、スピーディに売掛債権を現金化できるという大きなメリットがありました。
ファクタリングを利用するときの注意点については、ファクタリングのデメリットと重なりますが、大切なことですので、もう一度しっかり確認しておきましょう。
ファクタリングは、銀行融資などに比べると、手数料がかなり高いということは、しっかり、認識しておく必要があります。
2社間ファクタリングの平均手数料は、5~40%ぐらいです。これを年率換算すると、60~480%となります。
さらに、ファクタリングを利用するときは、銀行融資なども受けられず、キャッシュフローが滞り、緊急事態に陥っていることが多いです。
その窮状につけ込み、悪徳業者の場合、法外な手数料や保証金などを、事前に差し引いて振込むことが多いです。利用するファクタリング会社は、慎重に選択する必要があります。
まとめ
初めてファクタリングの利用を考えておられる方のために、ファクタリングについての基本的な情報をまとめました。
ファクタリングは資金調達がスピーディなので、上手に使えば急場をしのぐことができます。
ただ、高額な手数料などデメリットもありますので、ファクタリング利用に際しては、その必要性とファクタリング会社の選択について十分考えることが大切です。
デメリットやリスクを確認したうえで、上手に活用するといいでしょう。