最近、新たな資金調達の方法として「ファクタリング」という手法が注目されています。
ファクタリングは早期に資金を調達できるため、短期的な資金繰りに困っている企業が活用する例が増えています。
従来、短期的な資金繰りに困った企業は「手形割引」という手法を活用していました。
伝統的な手形割引とファクタリングにはどのような違いがあるのでしょうか。当記事ではそれぞれの共通点と違い。そこから生まれるメリット・デメリットについて解説いたします。
この記事を最後までお読みいただければ、状況によってファクタリングと手形割引、どちらで資金調達をするほうが適切なのか、判断できるようになります。
ファクタリングの利用が初めてで用語や仕組みがわからない方は、まずは以下の記事からご覧ください。
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ファクタリングとは
新しい資金調達の手法であるファクタリングとは、どのようなものなのでしょうか。
まずはファクタリングの概要について確認していきましょう。
ファクタリングとは売掛債権を売却することで、資金を早期に調達する方法です。
企業は取引先に商品の販売をした際に、通常販売時には資金を受け取らずに請求書を発行して、後で資金を回収します。この債権を「売掛債権」といいます。
売掛債権を回収することで現金化できますが、商品の販売と売掛金の回収には少しタイムラグがあります。取引先が請求書をもとに、現金を払ってくれるのを待たないといけません。
その期間の資金繰りに困ってしまう企業は多いものです。その対策として活用されるのが、ファクタリングだと考えてください。
ファクタリングを活用することで売掛金をファクタリング業者に売却することで、早期に現金化が可能です。売掛債権はファクタリング業者に移りますので、ファクタリング業者が、取引先の企業に現金の回収を求めることになります。
※取引手順どおりに画像が動きます
一方で、ファクタリングを使うことで、ファクタリング業者に手数料を払う必要がありますので、早期に現金化できる代わりにコストがかかるということは覚えておきましょう。
手形とは
次に手形について見ていきましょう。
(1)手形の概要
手形とは現金の代わりに受け取る有価証券です。
手形には支払い期日が記載されていて、期日になると額面に記載している通りの現金を受け取ることができます。
手形を発行した企業は、手形に記載する金額を支払い期日までに銀行の口座に入金しておく必要があります。
もし、支払い期日に額面金額を用意できない場合、手形は不渡りとなり、銀行との取引は停止。不渡りを起こした企業は事実上倒産扱いとなります。
手形は現金の代わりに発行します。現金を持ち合わせていなくても取引ができるため、企業活動には欠かせない存在です。
(2)手形割引とは
次にファクタリングと同じく、早期に資金調達ができる「手形割引」について解説します。
手形割引とは満期をまだ迎えていない手形から早期に現金を調達できる仕組みです。通常は手形を受け取って満期まで待ってから現金化します。
しかし、資金繰りが困難な場合、満期を迎えていない手形から早期に現金を受け取ることができます。その仕組みが「手形割引」です。
手形割引を行うと満期までの利息や手数料が差し引かれますので、手形の額面金額を満額受け取れるわけではありません。しかし、満期を待たずに現金化できるため、早期に資金調達をすることが可能となるのです。
ファクタリングと手形割引の共通点
ファクタリングと手形割引はよく似た手段として使われます。
ファクタリングと手形割引の共通点についてみていきましょう。
(1)早期に資金調達できる手段として使える
ファクタリングと手形割引は同じ目的で使われます。
その目的とは早期に資金調達をするという目的です。企業活動を行う中で短期的な資金繰りに苦しむことは多々あるでしょう。
ファクタリングや手形割引は従業員への給与支払いや商品の仕入れ代金の支払いなど、短期的に必要なお金を調達する手段として有効です。
企業が資金調達をする方法は株式の発行や銀行融資など、様々な方法がありますが、比較的長期的な運用に使われるものが多いです。
短期的な資金繰りに対する対応策として、代表的なものがファクタリングと割引手形であると覚えておくとよいでしょう。
(2)コストがかかる
ファクタリングと手形割引は資金を調達する手段として活用されますが、双方ともコストがかかります。
ファクタリングはファクタリング業者に手数料を払う必要があります。
一方の手形割引も、手形の額面金額を満期までの利息と手数料を差し引かれた金額を受け取ることになるため、満額を受け取ることはできません。
ファクタリングと割引手形、どちらの方法をとったとしても早期に現金化することでコストがかかってしまうということです。
そのため、ファクタリングや手形割引を行わなくても資金繰りに問題が無いのであれば、活用する必要はないでしょう。
ファクタリングと手形割引の相違点
ファクタリングと手形割引にはどのような相違点があるのでしょうか。
具体的に確認していきましょう。
(1)審査の基準が違う
ファクタリングと手形割引では審査の基準が異なります。
一般的に手形割引の方が、ファクタリングよりも審査は厳しいといわれています。
また、審査の基準も大きく異なります。ファクタリングは主に取引先の信用力が審査されます。その理由はファクタリング業者が、直接取引先に現金の回収に行くからです。
一方の手形割引は金融機関が直接取引先企業に現金回収に行くわけではないので、主に資金調達をする企業の信用力が審査されます。
審査の基準が異なるためどちらかの審査が通らないということもあり得るのです。
(2)貸し倒れ責任の有無
両社は貸し倒れ責任の有無も大きく異なる点です。
手形割引は取引先が不渡りとなってしまい手形の額面金額が払われなかった場合でも、支払う義務があります。そのため、手形割引をしても取引先の貸し倒れリスクは負い続けることになります。
一方のファクタリングは売掛金を売却しているため、売掛金が支払われなかったとしても責任はありません。
つまり、ファクタリング会社が売掛債権を買い取った段階でファクタリングを利用した企業としては貸し倒れリスクを負わないということになります。
万が一取引先が倒産等で、売掛債権を払えなくなった場合には、ファクタリング業者が損失を被ることになります。そのため、ファクタリング業者は売掛債権を回収できるか慎重に審査するのです。
(3)コストの違い
コスト面でも両者には違いがあります。
コスト面では比較的手形割引の方が安いと言われており、コスト面では手形割引の方が優位と言えるでしょう。
ファクタリングを利用する場合は、業者によって手数料が大きく異なります。しっかりと調べて手数料が安いファクタリング業者を選定することが重要です。
ファクタリングを使うべきケースとは?
ここまでファクタリングと手形割引の共通点や相違点について解説しました。
ここからは具体的にどのようなケースではファクタリングを利用した方がよいのか解説します。
(1)起業間もないなど、信用力が無く、手形割引の審査が通らない
手形割引を利用するにはファクタリングと比べて企業の信用力が必要です。
その理由は貸し倒れ時の対応の違いにあります。
ファクタリングは、売掛債権を売却した後に取引先が売掛金を支払わなかったとしても、ファクタリングを利用した企業が、売掛金の代金をファクタリング会社に支払うことはありません。
そのため、ファクタリングを利用する会社の信用力はあまり重視されないのです。
一方、手形割引の場合は取引先が不渡りとなった場合、手形割引を利用した企業が手形の額面金額を支払う必要があります。
このような違いから手形割引は信用力が低い企業は使うことができないのです。
起業から間もない企業などはまだ信用力が足りず、手形割引を利用できないケースもあります。そのような場合にはファクタリングを利用すると良いでしょう。
(2)貸し倒れ責任を負いたくない
ファクタリングは手形割引と比べると、貸し倒れ責任を負わないというメリットがあります。
取引先の信用力が低く、貸し倒れ責任を負いたくない場合はファクタリングを活用するとよいでしょう。
ただし、信用力が低い取引先の売掛債権はファクタリング業者としてもリスクが高い債権となりますので、コストは高くなってしまいます。信用力の低い取引先への売掛債権をファクタリング業者に売却しても、結果的に得られる金額が少なくなる可能性もあります。
また、取引先の信用力が低い場合には審査が下りない可能性も高くなりますので注意が必要です。
手形割引を使うべきケースとは?
次に手形割引を使うべきケースを見ていきましょう。
まず、前提となるのは手形割引を利用するためには自社の信用力が必要ということです。信用力がなければ金融機関から手形割引の審査がおりませんので、使うことができません。
また、利用する企業にとっては取引先の信用力も重要となります。
取引先が不渡りを起こした場合、手形割引を行っていたとしても額面金額の支払い義務が生じます。自社と取引先の両方の信用力が高い場合手形割引を選択しても良いでしょう。
また、手形割引はファクタリングよりもコストが安く済みます。
まとめ
ファクタリングと手形割引について解説しました。
ファクタリングと手形割引は、どちらも早期に資金調達を行うための手段です。
ファクタリングには審査が通りやすく貸し倒れリスクを負わないというメリットがあります。一方の手形割引には、ファクタリングよりもコストを抑えて資金調達ができるというメリットがあります。
双方にメリットとデメリットがありますので、早期に資金調達が必要な場合には現在の経営状況等をふまえて選択するとよいでしょう。